カビ大戦争

 

カビとの戦い
     kabi.gif (4125 バイト)
別名、雨の街と呼ばれるヒロにある我が家では、毎日、3台の除湿器がフル稼働しています。雨の日は、水がいっぱいになると、運ぶとき重くてよろけそうになるくらいのバケツ大のタンクに、約半日で水が溜まってしまいます。

このヒロの湿度と、年中暖かいという条件は、カビたちに取って最高に居心地がいいというわけです。さて、私たち家族と、カビとの長い戦い。そして現在、どんな方法で私たちが優位に立っているかを聞いてください。


 【観察】

昨年の3月、今の家に引っ越しをし、ふと天井を見上げたとき、黒い小さな点々がたくさんあることに気が付きました。それはまるで星座を形作っているかのようで、近づいて見ても、一個一個が星のような形をしていました。それこそが、湿度の高いヒロで1年中活発に繁殖するカビたちだったのです。さて、ひと部屋気が付いて、そういう目で家の中を点検すると、実は家中カビだらけであることがわかりました。もちろん家の中も外もです。
 
それでは、どんな意外なところにカビが発生したか書き出してみます。

:いくら梅雨のときといえども日本では、洗濯した後の服にカビが生えたことはありませんでした。ある日、パーティーに着て行こうと黒いワンピースをクローゼットの中から出したところ、白い斑点状カビによる模様が付いていました。情けなくて半べそをかきました。

新品の畳敷きスリッパ:ハワイではスリッパを裸足で履くことが多いだろうから畳敷きが気持いいかと思い、日本で購入し運んできてしばらく置いておいたところ、履き心地を試す前に、畳の部分が薄緑色のふわふわしたカビに覆われていました。

赤とうがらし、オイスターソース、醤油、八方だし、日本酒:全部、さあ料理に使おうと手に取ったとたん、中に生えている醜いカビの姿に気が付いて、そのたび料理をする気が失せました。今は、まさかこんな物には生えるまいと思う調味料でも、まず目を凝らして、カビがないことを確認してからではないと使いません。

毎日、食事のたびに座っている椅子:日が射す明るいキッチンに置いあり、1日3回以上座っている椅子です。どうしてカビの生える余地があるのでしょう?油断も隙もありません。

ビデオテープ
:カビが生えているとは知らずに観てしましました。でも、どうも画面が変だと思い、「まさか、ビデオまで?」と、恐る恐るテープを開けてみると、白い雪の結晶のようなカビが生えていました。テープは捨てて、ビデオデッキは修理に出しました。

:額入りの草木染めの絵が少し変わってきたかと思ったら、カビでした。

前日まで履いていた靴:雨に濡れたので、一日干した後、さあ履きましょうと思ったら、干している間にカビが生えました。

レイ:記念に頂いたレイを乾燥させて大切に保存しようと思ったら、ドライになる前にカビ王国になっていました。

続いて、ヒロの友人からの報告です。

コンピュータのハードディスクとプロッピーディスク:恐ろしいことに、データが全部だめになったそうです。それを聞いてコンピュータをこよなく愛している夫は大変ショックを受け、すぐシアーズで1番高い除湿器を買ってきて部屋に置き、フロッピーは乾燥剤入りタッパーに入れていました。

マット:何日間か、布団を引きっぱなしにしていて、ある日、マットを退けたら床にカビが生えていたそうです。ホノルルから移ってきたばかりの彼女には、さんざんヒロのカビのことを注意しておいたので、彼女は思わず「ついに出たな!ヒロのカビ」と叫んでしまったそうです。

麦わら帽子:手に取ったら、そのまま帽子の形が崩れてしまったとのことです。


 【終わりなき実験】

さて、私たちはすぐにカビ取りに取りかかりました。最初は、漂白剤を薄め、カビを拭き取り、次に濡らした雑巾で漂白剤を拭くようにしていました。そのうち、漂白剤を残しておけばもっと効果が持続するに違いないと思い、漂白剤を拭き取らないようにしました。この方法で家中を拭いて、さあカビをやっつけたと安心していたのです。

ところがたった1ヶ月の後、1度きれいにした壁と天井に、またポチポチとカビが付き始めたのです。脚立に上って、天井まで全部拭いたのに、がっかりしました。このままでは、1ヶ月に1度は、家中の壁と天井を拭かなければなりません。これではまるで金門橋のペンキの塗り替えと同じです。終わったと思ったら、最初に塗ったところをもう塗るころになっているという。

それでもそのころ私たちは、根気よく漂白剤で家中のカビ取りばかりしていました。もともと荒れやすかった私の手は、ブリーチで皮が剥けてボロボロになりました。さらにあかぎれのようになり、とても暖かいところに住んでいる人の手とは思えませんでした。

天井のカビ取りをするときは、よくミケランジェロのことを思い出しました。彼が有名なイタリアのシスティーナ礼拝堂の天井画を描いていたとき、友人宛に「私の首と手は無理な姿勢のため曲がり、顔には絵の具がポタポタ落ちてくる。孤独で辛い作業だ」と書き送ったというのです。顔に漂白剤がぼたぼた落ちてくると、「ミケランジェロの気持ちがよくわかる」と呟いたものです。

隣に住むアメリカ人がカビ取りに燃えている私たちにいいました。
「ハワイでは、カビ取りよりもっと楽しい経験がたくさんできるのだから、カビ取りは専門のメイドさんに頼みなさい。1時間15ドルでやってくれるいい人を紹介するから」

でも、残念ながら私たちには人に頼む余裕はありません。せっせと自分たちでやっていました。やがて私の母がヒロに遊びに来ました。早速、母もカビ取り部隊に加わりました。

 【さらなる観察】

カビを取りながら、どうしてカビが発生してしまうか考察しようということになりました。

よく見ると、我が家の壁はしょっちゅう水で濡れているのです。できるだけ窓を開け、風通しをよくしようとしますが、昼間でさえ壁から水がたらたら垂れているのです。びっくりして乾いた雑巾で水を拭きながら、どうしてこんなに結露するのか考えました。

ひとつは、昼と夜の気温の差があります。我が家は、マウナケの山の麓にあり、やや標高が高いのです。夜は、六甲おろしさながらの、マウナケアおろしの冷たい風が吹き、家中がひんやりします。昼間は、逆に海風に変わります。この暖かい海風が夜の間に冷えた壁に当たると、空気に含まれている水分が冷たい壁に結露してしまうのです。

解決策として、家が冷えたままの午前中には窓を開けないということにしました。それでも相変わらず壁からは水が垂れ、そこからまたカビがすぐに生えてきました。


 【勇敢な実験】

母も母なりに、カビ取りの試行錯誤を繰り返していました。ある日、輝く顔で報告にきました。

「大発見!閃いて、壁を舐めてみたの。そうしたら、すごく塩辛かった。つまり、漂白剤で拭いただけの壁は塩素が残っていて、その塩が空気中の水を含んでびしょびしょになるのよ」

いわれてみると、乾いているとき壁はザラザラしています。それが全部、塩だったのです。お母さん、壁を舐めてくれて有り難う。

しかし、今度は漂白剤を拭きあげるということが、とても大変であることがわかりました。何回水拭きしても、ぬるぬるしたものがが壁に残るため、今度は、漂白剤を完全に取り去る洗剤を探し始めました。 

ハワイに来てから、アメリカでは、ビネガー、ベーキングパウダー、アルコールを掃除の三大武器と深く信じてしていることを知りました。漂白剤を取り去るために、たくさんの種類の掃除用洗剤類を購入し、それが邪魔で仕方なくなってきたとき、この3つを試すことを忘れてはいけないと思い出しました。すると酢が1番、そのぬるぬるを取り去ってくれるようでした。

それからは漂白剤と一緒に、酢も買い込むようになりました。そして、漂白剤の臭いに頭痛を覚えつつ、酢で拭きあげては掃除し続けていました。


 【結果】

ある日、オフィスから戻ってきた夫が、勝利の表情でいいました。
取引先の人が、お酢会社が発行している「ビネガーは全てを救う」というような資料の一部をコピーしてくれたというのです。そこに、「カビは、薄めない人工醸造酢で拭く」と書いてあったのです。試してみたら、それでした!お酢を使うと、まるで黒板消しでチョークの文字を消すように、面白いくらいカビが取れるのです。根こそぎ退治という感じです。

「酢」という結論に至るまでに、実に半年が経過していました。今では、いつもスプレーボトルに酢を入れておき、カを見つけると酢を一吹きして、ボロ布で、すすすすすっと拭いてお終いです。臭いも、お酢なら大丈夫。最近は、カビ取りが楽しいくらいになりました。

しかし、油断大敵。最近、鏡の表面にカビが生えていました。ハワイの強い紫外線で、顔にシミができたかと焦ったじゃない!カビの奴。
人間に取って一年中過ごしやすい気候のヒロに住む限り、カビとの熱い戦いに終わりはきそうにありません。