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                1994年/晩秋  奥村成子

紅葉の便りと共に、湖東三山の旅を思い出す昨今となりました。夫を失った後、波涛のように押し寄せた悲しみも、四年を過ぎた今日では、凪の日も多くなりました。昨夏娘を嫁がせ、一人暮らしになってからは、気楽に残された人生を、思いのままに生きているつもりでしたが、誕生日を境にして、年金や丸福といった恩恵が交付され、いやでも老いを認識せざるを得なくなり、同時に坂を転げ落ちる感じがし、沈みがちに過ごす日が多くなって参りました。

そのような時期、関西の教会から、『高齢者への福音ケアについて学ぶ旅』ということで、ハワイのマキキ教会訪問の誘いを受け、十月に5泊6日で参加して参りました。高齢化している一世、二世の方をお見舞いすることが大きな目的と思っていましたので、日本らしいお土産を携え、少しでもお慰めできればくらいに考え出掛けたのですが、驚きと感動に圧倒される旅になってしまいました。

まずホノルルの地で、高知城を見たこと(マキキ聖城教会)、高知の藩士だった奥村多喜衛牧師が75年前に建堂した教会とのことでした。そこには、70歳以上の会員が181名おられ、会員の11%を占めていました。お茶の接待をしてくださる方が八十何歳とか、七十何歳とか、それらの方が、明るい色のムームーやアロハ・シャツを着て、生き生きとボランティア活動に勤しんでおられるのです。そこには、自分の役割があり、自分を必要とする人がいて、働きの場を与えられている。一週間5日教会で過ごし、昼食を揃って取った後、家に帰る。家とはいえ、殆どの方が一人暮らしのようでした。

気候が良いことも健康の元でしょうが、一人一人が本当に明るく、各々の歩みを楽しんでいるといった感じで若々しいのです。話し合ったSさん(92歳)に渡米当時や、戦争中の苦労話をして頂こうと語りかけましたが、「いろいろあったけど、それはもう過ぎ去ったこと。私は現在を精一杯、明日に向かって生きている」と。この答えは感動的でした。その生き方こそ、私に大切なことと、はっと目を覚まされる感じで、老いに対する認識を一度に剥ぎ取られた思いになりました。

教会の集まりの他に、老人施設、病院、ミニケアホームも訪問致しました。私の訪れたミニケアホームは、自宅を使って、五人の老人を預かり、姉一家と妹、ヘルパーの方一人を加えて、一家を挙げてのケア・ビジネスをされている家でした。一人150ドル。寝たきりになったら退所という約束で、老人ホームに入る前の、リハビリ感覚でやって来られる人を対象にしているようでした。老人独特の表情の方もありましたが、一人一人が与えられた部屋を各々に飾り、真っ赤なマニキュアをしている手が印象的でした。観光とお土産に没頭する旅と趣きを異にして、少々ハード過ぎる旅でしたが、これからの生き方に大いにプラスになる経験になりました。

私も自分なりに生きがいとする友の会という一種のボランティア活動で、若やいだ気持ちで私なりの生き方をしていきたいと思いを新たにした旅でした。